働き続けるための「余暇活動」の意外な重要性
生田目:無事に就職し、キャリアを歩み始めたとしても、それを継続していくことは、また別の難しさがあると感じます。長く、そして心豊かに活躍してもらうために、支援者として、あるいは保護者として、どのような視点をもつべきでしょうか?
鳥井:私が常に大切にしていることは、「余暇活動」の支援です。実は、私たちキャリアコンサルタントの世界では、「職業人生」とプライベートな「余暇活動」、その両方を合わせて初めて「キャリア」と呼びます。仕事だけが人生ではありません。仕事で疲れた心をリフレッシュさせたり、仕事以外の世界で楽しみを見つけたりすることは、結果的に長く働き続けるための、何より大切な土台になるのです。
生田目:余暇活動、ですか。当塾(代表の生田目が運営する「すばるゼミ」)の保護者からも、「うちの子は家に帰ってくると、ずっとスマートフォンでゲームばかりしていて…」という相談を受けます(笑)。
鳥井:よくわかります(笑)。ですが、私はそれを頭ごなしに否定はしません。まず、本人の「好き」という気持ちを肯定してあげることが出発点だと思っています。ゲームに熱中している時間は、仕事の嫌なことを忘れられ、その子にとって必要不可欠な時間なのかもしれないからです。その上で、たとえば、私は「ポケモンGO」をよく勧めていました。子どもたちを自然と外に連れ出し、歩かせ、時にほかのプレイヤーとの交流を生む、非常に優れた社会的活動ツールになります。本人の興味の枠の中から、少しでも外の社会とつながるきっかけを一緒に探していく。その視点が大切です。
▲障がい者の方が能力を活かして「いきいき」と働き続けられることをめざすイオングループの取りくみ「いきいきイオン」にて、障がい者従業員に業務の方法をレクチャーしている様子
生田目:なるほど。ただ、なかには趣味と呼べるものが何もない、というお子さんもいます。そういう場合はどうすれば……?
鳥井:おっしゃる通り、特に年齢が上がってからだと、本人も「何が好きなのかわからない」ということが多いですね。そして、趣味がないことの根底には、雑談が苦手という、コミュニケーションの課題が隠れていることも少なくありません。ですから、私は就労移行支援の場で、ある二つのテーマについて調べ、発表してもらうトレーニングを実施しています。そのテーマとは、「自分の出身都道府県」と「ポケモン」です。
生田目:ポケモン、ですか?(笑)
鳥井:はい(笑)。なぜなら、この二つは、絶対に誰も嫌いな人がいないテーマだからです。出身地の話やポケモンの話がきっかけで、職場での何気ない会話が弾むかもしれません。雑談が苦手な方でも、安心して話せる共通の話題という「武器」を一つ持つだけで、コミュニケーションへのハードルがグッと下がります。余暇活動の支援とは、単に楽しみをみつけるだけでなく、こうした日々のコミュニケーションを豊かにし、職場での居心地のよさを作っていくための、非常に重要なアプローチなのです。
生田目:なるほど。余暇活動は単なる楽しみの時間ではなく、自己理解を深めたり、職場での人間関係を築いたりするうえで大切な役割を持っているのですね。職場で長く働き続けるためにも欠かせない視点だと感じました。本日は貴重なお話をありがとうございました。
鳥井:こちらこそありがとうございました。
鳥井 孝繁(とりい たかしげ)
- アビリティーズジャスコ株式会社 ダイバーシティ推進事業部 部長
東京農業大学を卒業後、レコード店に就職し15年間店長として勤務。顧客との対話のなかでカウンセリングの面白さに目覚め、キャリアコンサルタントの道へ。特例子会社での実務経験を積むためにアビリティーズジャスコ株式会社に入社し、以来、障がいのある方の就労支援に深く携わる。国家資格キャリアコンサルタント、訪問型職場適応援助者(ジョブコーチ)の資格をもつ。現在は同社のダイバーシティ推進事業部長として、イオングループ全体の障がい者雇用、健康経営、多様な人材の活躍推進に関するコンサルティングや研修を担っている。趣味は落語とレコード収集。
生田目 康道(なまため やすみち)
- 株式会社EDUWARD Press 代表取締役会長
株式会社JPR 代表取締役社長(プリモ動物病院)
株式会社QIX 代表取締役社長
株式会社QAL startups 代表取締役共同CEO
一般社団法人日本ペットサロン協会 専務理事
株式会社MIHAO 代表取締役社長(すばるゼミ)


















