発達特性のあるお子さんの「働く未来」を考える保護者の方へ、障がいのある方の雇用を促進する「特例子会社」という就労先をご存じでしょうか。今回はイオングループの特例子会社であるアビリティーズジャスコ株式会社ダイバーシティ推進事業部の鳥井 孝繁(とりい たかしげ)さんに、お子さんの自立に必要な事柄についてすばるコレクト運営の生田目 康道(なまため やすみち)が話を伺いました。(取材:2025年9月17日)

特例子会社 アビリティーズジャスコの独自性

生田目康道(以下、生田目):本日はありがとうございます。まず初めに、この記事を読む保護者のなかには、「特例子会社」ということば自体に馴染みがない方もいらっしゃるかと思います。アビリティーズジャスコ社はどのような事業を行う会社なのか、教えていただけますか?

鳥井孝繁(以下、鳥井):はい。お子さんの将来、「働く場」を考えるとき、不安を感じる保護者の方は多いのではないかと思います。そのようななかで、就労先の選択肢の一つとして知っておいていただきたい情報が「特例子会社」という制度です。

 特例子会社とは、企業が障がいのある方の雇用の場を広げるために、国から特別な認可を受けて設立する会社のことです。もともとの親会社とは別に、障がいのある方が働きやすいように配慮された職場環境が整えられていることが大きな特徴といえます。

 たとえば――
・静かな環境で集中して作業できるように工夫されている
・職場のスタッフが日々のサポートや相談に乗ってくれる
こういった安心できる環境のなかで、障がいのある方がいきいきと働くことができるでしょう。

 特例子会社のなかでも、当社は少し特殊でして、もともとは『重度の障がいがある方でも活躍できるお店を作りたい』という想いから、親和性の高い書籍の販売店舗としてスタートしました。その精神は今も受け継がれています。

 現在は、障がいのある方の就労を支援する障害福祉サービスや福祉用具の販売が大きな柱となる会社になっています(図)。皆さんがイメージする一般的な特例子会社とは、かなり異なるかもしれません。


図 アビリティーズジャスコ株式会社の主な事業内容

生田目:
と、言いますと?

鳥井:多くの特例子会社は、親会社から業務を提供してもらい、その業務を遂行することがメイン事業となります。たとえば、事務作業を請け負ったり、グループ内の清掃業務を担当したり、といった形ですね。しかし、私が入社した10年前からすでに「自分たちで事業として成り立ちなさい」「仕事も自分たちで作りなさい」と、常に言われ続けてきました。

 親会社から仕事が下りてくるのを待つのではなく、自身で社会のニーズを探し、事業として成立させる。つまり、会社として自走し、自立することが求められてきました。単純な機能会社ではなく、一つの事業会社として社会と向き合っている点が、最も大きな違いだと思います。

生田目:なるほど。だからこそ、就労移行支援事業や研修事業、メンタルヘルスケア事業など、多角的な事業展開をされているのですね。正直なところ、ウェブサイトを拝見しただけでは、一言で「どんな会社か」を理解するのが難しいと感じました。それは、常に新しいチャレンジを続けてきた証なのですね。

鳥井:そうかもしれません(笑)。必要に駆られて事業が増えていった、というのが実態に近いですね。たとえば、障がいのある方の雇用をサポートしていると、今度は受け入れる側の現場の社員が疲弊するという課題がみえてきます。それならば「現場の社員を元気にするためのメンタルヘルスケア研修も必要だ」というように、一つ一つの課題に向き合ってきた結果が、今の事業内容になっています。


支援の核となる「ジョブコーチ」の視点

生田目:
鳥井さんご自身の経歴も非常にユニークですよね。もともとは神保町のレコード店で15年も働かれていたとか……。

鳥井:はい。音楽好きが高じてレコード店で働いていたのですが、徐々にお客様からの人生相談が増えてきまして(笑)。あるとき、「鳥井さんはカウンセラーに向いているんじゃない?」と言われたことをきっかけに、キャリアコンサルタントの資格を取りました。その後、ジョブコーチという資格の存在を知ったのですが、取得には特例子会社での実務経験が必要でした。そこで当社に「1年だけ働いて資格を取ったら辞めよう」と思いつつ入社したことが、今につながっています。


▲ダイバーシティ推進事業部での業務風景。障がい啓発のためのオンライン研修を実施している


▲特例子会社のサポート体制として、特例子会社で働く障がい者従業員が安心して働けるように、定期的にカウンセラー(写真は鳥井さん)が面談をしてメンタルケアを行う

生田目:
ジョブコーチは、障がいをもつ人と職場との間に入り、さまざまな調整を行う専門家ですよね。障がいをもつ人が働く現場では、ミスマッチが起こることがあります。その「間」をつなぐという役割は、非常に重要だと感じます。

鳥井:おっしゃる通りです。ジョブコーチの考え方で大切なのは、「ナチュラルサポート」という概念です。ジョブコーチがいつまでも間に入っていては、本人も職場も自立できません。ですから、私たちは最終的にその職場からスッと消えること、つまり「フェードアウト」することを目指します。私たちの役割は、周囲の人が自然な形でサポートできる体制を職場内に作っていくことなのです。

生田目:素晴らしい考え方ですね。それは障がいの有無に関わらず、新入社員が入ってきた際の教育など、あらゆる場面で応用できる視点だと感じました。