コロナ禍以降は教育のICT化(情報通信技術を業務で活用し、業務の効率化や生産性向上を図ること)を追い風に、柔軟で多様なカリキュラムを用意する通信制・定時制の高校、大学などがあらためて注目され、特に通信制という学びのスタイルは、その社会的なステータスが以前より向上してきています。

 私はソーシャルワーカーの立場で学齢後期の利用者の在籍校を訪問し、先生方とも連携する機会がありました。今回はその現場体験をもとに、中学卒業後の進路選択についてお話をさせていただきます。

事例1:「定時制工業高校に進学したAさん」

 本連載の第2回(https://subarucollect.jp/detail/403/)でもふれましたが、日本の公教育は、残念ながら発達特性のある子どもを中心にデザインされてはいません。現在は、高校や大学などで合理的な配慮の提供をはじめ、さまざまな支援がなされてきているとはいえ、いまだ十分な教育環境が整っているとはいえない状況です。中学校卒業生の多くが全日制普通科高校への進学を希望しますが、「志望校のカリキュラムが本人の学び方や特性に合っているのか」、「適切な支援や配慮を受けられるのか」、「卒業後の自立や就労につながるのか」、などが進路選択のための重要なポイントになると考えられます。

 自閉スペクトラム症(ASD)と起立性調節障害のあるAさんは、起床時間が遅くなりがちで、午前中いっぱいは体調が整いません。また音への感覚過敏があり、集団のなかに長時間いるのも苦手で、小・中学校時代は放課後に別室登校をしていました。小学校低学年からロボット工学やプログラミングに興味があったAさんは、高校進学にあたり、迷わず定時制の工業高校を選択し、保護者もそれを応援しました。

 入学説明会に親子で参加すると、生徒数は全学年で30名程度と少人数であり、教員の配置が非常に手厚いことがわかりました。授業の開始は夕刻で、Aさんの体調が十分に整う時間帯です。実際に入学してみると、クラスメイトの数が少なく、集団から受ける音の刺激も低いため、Aさんにとっては大変学びやすい環境でした。また、教員との精神的な距離が近く、担任以外の先生も気さくで話しやすいと言います。現在は学校生活にも慣れ、部活動やアルバイトも自分のペースで行っています。中学時代の友人とはウィークデーの活動時間こそ合わないものの、土日は一緒に外出することもあり、交流が続いています。

 在籍校担当者の話によれば、何より学校を休まず、自分のペースで興味のある授業を受けられているので、学校生活はかなり充実しており、成績もよいそうです。卒業後は指定校推薦で大学に進学し、電子工学系の勉強を継続する予定とのことです。