「スクールカウンセラー」(以下SC)は小学校・中学校・高等学校に配置・派遣されている心理職です。その学校に在籍する児童生徒とその保護者ならば、SCに相談することができます。

 発達障がいについてSCに相談するケースとしてまず考えられるのは、診断がつく前に「同級生や教員との関係」、「集団不適応」、「学業不振」など、学校や社会での生活に困難を覚えて相談することです。この場合、当初はなかった発達障がいという視点が相談を進めるなかで浮上し、SCから学校内でできる支援や学校外の相談機関を紹介されます。

 それでは、すでに医師の診断があり、医療機関や療育センターなどに通っている場合には、SCに相談する意味はあるのでしょうか? 私の経験では、次の3つの事例のようなときに、SCに相談する意味があると考えます。

事例1:「保護者が利用する場合」

●来談経緯
 小学校中学年の児童の保護者が来談しました。学級担任から「授業中に落ち着きがない」と指摘されて困惑していたときに、居住する地方自治体の広報誌に載っていた教育相談所(教育委員会が設置する公的な相談機関)に相談しに行きました。保護者は相談員から発達の偏りがある可能性を示唆され、医療機関受診を勧められました。

 母親は驚きつつもすぐに子どもを連れて児童精神科を受診すると、ADHD(注意欠如・多動症)という診断名がつき、薬物療法を勧められました。
 母親はわが子が落ち着かない理由はわかりましたが、これからわが子にどのように接したらよいのかはわかりません。また、薬を飲ませることへの抵抗もありました。途方に暮れていたところ、わが子が学校から持ち帰った配布物のなかにSCの案内がありました。「なんでも相談してください」という文言を頼りに、早速連絡をして面接の予約を取りました。

●SCの対応①「心理教育」
 心理教育とは、ADHDなどの発達特性や心の課題について、正しい知識を学び、理解を深めるための支援のことです。
 SCはこれまでの経過を聞き取ると、保護者に対してADHDの問題には「不注意、多動などのADHDの特性」、「特性の結果生じる社会生活のなかでの生きにくさ」と「抑うつや不安などの二次障がい」の3種類があることを説明しました。そして、問題の種類によっては医師が勧める薬物療法が効果的な場合と、本人や家族の工夫や努力で変化が起きる可能性がある場合、さらに学校など環境調整が効果的な場合があることを伝えました。

※二次障がいとは、発達特性そのもの(一次障がい)ではなく、周囲の理解不足や積み重なった失敗体験などによりあとから生じる心理的・行動的な困難のことです。たとえば、注意され続けた経験から自信を失い、不登校や意欲低下、抑うつ傾向などがみられる場合などを指します。

●SCの対応②:問題に優先順位をつける

 SCは保護者の話に耳を傾けながら、学校から伝えられる問題と家庭で気づいた問題をリストアップして、両者が必ずしも同じではないことを整理しました。そして、そのリストの中で優先順位をつけて「優先順位リスト」をつくり、家庭で取りくむことと学校に頼むことをまず1点に絞り、一つずつ順を追って実行していくことを提案しました。

●SCの対応③:教員からの聞き取り
 学校で起きている問題のすべてを保護者が理解しているとは限りません。例えば、学級担任から「大変なんです」、「今日はこんなことがありました」などと言われると、申し訳なさが先に立ち、問題が何かを明確にしたり冷静に判断したりすることが難しいからです。

 そこで、SCは保護者の了解を得て、学級担任に学校での様子を聞き取りました。そして、学校で起きている問題をA4判1枚程度にまとめて保護者面接で伝えました。これは口頭よりも書面の方が感情的にならずに冷静に受け止められるというねらいがありました。そのうえで、保護者とともに、先の「問題に優先順位をつける」で取り組んだ「優先順位リスト」をつくり直しました。


●SCの対応④:医師に学校での様子を情報提供
 SCは保護者に、学校での様子が具体的にわかったほうが、医師が心理教育の項で述べた「ADHDの特性」や「二次障がい」の治療に薬物療法を用いる際に役立つのではないかと提案しました。そこで、SCがコーディネートして、先の「教員からの聞き取り」で作成したA4判1枚の書面を参考にして、学級担任がまず学校での様子をリストアップして、それを保護者に見せて同意を得られたものを完成版とする情報提供書を作成し、それを受診時に医師に渡すという取りくみを行いました。口頭で伝えるのは保護者が負担で、長すぎる書面は受け取る医師に負担と考えて、A4判1枚程度にまとめられるように工夫しました。

 この情報提供書を見た医師は、薬の種類や量を調整してくれたうえで、学校宛の返事を書きました。2回目以降の情報提供書作成は、SCが間に入らずに、学級担任と保護者だけで行いました。この取りくみは小学校卒業まで続きました。

●SCの対応⑤:中学校のSCを紹介
 学年が上がってからも、「小学校では学級担任との協働がうまくいったけれど、中学校ではどうなるか」と保護者は不安を感じていました。小学校教員から中学校教員への引き継ぎは当然行われますが、保護者の不安が少しでも軽減するように、SCは中学校のSCと連絡を取り、相談に行く可能性がある保護者と中学校のSCを対面させる仲介を行いました。実際に相談に行く必要が生じるかはわかりませんが、いざというときに相談できる人の名前と顔を知っていることは大きな安心材料になるのではないかと考えられます。