進路選択での保護者の立ち位置

 日本の公教育は、残念ながら発達特性のある子どもを中心にデザインされてはいません。インクルーシブ社会構築への橋渡しとして、現在は特別支援教育が施行されており、合理的な配慮の提供をはじめ、さまざまな支援がなされてきているとはいえ、未だ十分な教育環境が整ってはいない状況です。

※インクルーシブ社会:さまざまな特性や性別、国籍、年齢などにかかわらず、すべての人が共生していくことを目指す社会。
 
 特に義務教育修了以降の進学を考えるときは、本人の特性と進学先の相性に着目する必要があります。そして、自ら選び、自ら決める行為には本人の責任が伴います。オープンキャンパスや学校説明会など、機会をとらえて必ず本人が自らの足を運んで情報を確保することが不可欠です。しかし、新しい場面への苦手さや実行機能の弱さなどから、本人がなかなか行動に移せないことも予想されるので、初動に関しては、保護者や支援者によるサポートが必要となります。その後、ある程度見通しがつき、本人が慣れてきたら、周囲は徐々にフェードアウトしていくとよいでしょう。

 最終的には、本人による自己選択・自己決定がなされ、保護者が経済的な支援や環境調整、情報提供などでその背中を押すことが望ましいと考えます。本人が自分で選び、自分で決めた学校は、入学後の定着率や出席状況もよい印象があります。就労に関しても、おおむね似たようなことがいえます。保護者の方は、本人が日々心穏やかに通い、自分のペースで学び(働き)続けられることを最重要ポイントとして進路選択をしていってはいかがでしょうか?


近藤 幸男(こんどう ゆきお)

神奈川県川崎市発達相談支援センター ソーシャルワーカー(特別支援教育士)。
横浜市の中学校通常級(国語科)、支援級、特別支援学校、通級指導教室の担当教員を務めた後、現在は川崎市の発達障害者支援センターでソーシャルワーカーとして勤務する。「通級指導の実際」について、明治学院大学心理学部教育発達学科に出講中。

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