わが子には成人してからも健康で楽しい生活を送ってほしいと願うものですよね。そのために発達特性のあるお子さんの進学や就労について不安を抱える保護者の方は多いのではないでしょうか。この連載では、そのような不安を解消し、進学や就労というライフイベントを親子で見通しをもって歩むことができるように、各ライフステージに沿った教育や福祉の専門家の方々に協力いただいて、参考となる内容を紹介していきたいと思います。

子どもに合わせて環境を整える

 私は22年間、幼児期から成人期までの発達障害・知的障害のある方とその家族への支援、また認知症高齢者の支援に携わってきました。その経験から感じたことは、「子どもの長い人生のなかで、いかにQOL(クオリティ・オブ・ライフ、人生の質)を高めるか?」が大切だということです。言い換えれば、「人生をいかに楽しく幸せに過ごせるか?」という視点で、これには2つあります。

 まずは、子どものまわりの環境調整を行うという視点です。子どものQOLを高めるためには、子どもだけが頑張ればよいわけではありません。「子どもが安心して楽しく過ごせる環境は?」「今ある環境をどう工夫したら楽しく過ごせるのか?」ということを保護者が考え、周囲の環境を子どもに合わせる(社会の側が個人に歩み寄る)必要があります。

 発達特性のある子ども自身が、今ある環境に一生懸命合わせることは非常にストレスフルであり、人生を楽しむことからほど遠くなってしまいます。

 保護者は、つい子どもに「もっと頑張れ」、「まわりに合わせて」と言いたくなる場面が少なくありません(私自身もつい言ってしまい、反省することは多々あります)。しかし、近年では子どもにただ「問題を起こさず表面的に適応すること」だけを求めても、健全な発達は保障できないとも指摘されています。