障害のある子の家族にとって「親なきあと」は共通の、そして永遠の課題です。多くの親は「親なきあと」について、漠然とした不安を抱いていると思います。自分たちがいなくなったあと、子どもはどんな生活をするのだろうか? お金は足りるのだろうか? 体調を崩したら誰が面倒をみてくれるのか? 悪い人にだまされたりはしないだろうか……。
 この連載では、このような不安を解消し、みなさんの疑問にお答えするかたちで、暮らしに関するさまざまな制度やしくみをご紹介していきます。

お金、住まい、日常生活について、利用できるサービスがあります

 「親なきあと」の悩みを解決するために何をしたらいいのか、具体的にイメージしづらいのではないでしょうか。親である自分たちがいなくなった、あるいは面倒をみられなくなったあとのことなので、どんな準備をしたらいいのかがわからず、モヤモヤとした不安を募らせているのが多くの親たちの現状だと思います。

 整理して考えてみると「親なきあと」の課題は、以下の3つに集約できます。
① お金で困らないための準備
② 生活の場(住まい)の確保
③ 日常生活の支援


 そして、それぞれの課題について、利用できる福祉サービスがあり、民間の金融機関などが提供している商品があり、また地域独自の取りくみがあります。


▲「親なきあと」の3つの課題

 特に何も準備をしないまま親が亡くなると、相続※1が発生して子どもが大きなお金を一度に受け取る可能性があります。そのお金を適切に管理できないと、短期間に使ってしまうことがありえます。そこで、本人が定期的にお金を受け取れるようにしておくと、将来の生活を支えるという意味で安心につながりますね。

※1 相続:一般的には遺産相続ともいう。亡くなった人の財産や権利・義務を、残された家族などが引き継ぐこと

 具体的な制度としては、信託や共済といったしくみを検討します(以降、詳細を解説していきます)。また、そのお金を管理する方法として、成年後見制度※2や日常生活自立支援事業※3といった制度の基本的なことも知っておきたいですね。

※2 成年後見制度:判断する力が十分でない人に代わって、財産管理や契約手続きを支援するための制度
※3 日常生活自立支援事業:ある程度の判断能力はあるが、福祉サービスの利用手続きやお金の管理などについて援助が必要な方を、社会福祉協議会が支援するしくみ


 生活の場所としては、入所施設やグループホームといった福祉サービスによる住まいが代表的です。一般的なグループホームには平日の日中は支援者がいない場合が多いのですが、この時間帯も支援があるところ(日中サービス支援型)や、スタッフの見守りや支援を受けながら、アパートなどの個別の住まいで一人暮らしに近い生活ができるかたち(サテライト型)など、種類は増えています。その他にも、福祉サービスの制度に当てはまらない、シェアハウスなどの住まいを利用する方法もあります。

 日常生活の支援では、居宅介護※4や訪問看護※5など、外部から支援者が定期的に訪問することで一人暮らしをサポートするしくみや、外出時のサポートをする移動支援※6などの福祉サービスがあります。

※4 居宅介護:自宅で生活しながら、食事・入浴・排せつなどの日常生活の支援を受けるサービス
※5 訪問看護:看護師などが自宅を訪問し、健康管理や医療的なケア、相談支援を行うサービス
※6 移動支援:外出が一人では難しい人が、通院や余暇活動などで安心して外出できるよう支援するサービス(ただし、通勤・通学は原則対象外)


 どんな課題があるかが明快になり、それに対応する方法がいろいろとあること、そして新しい制度やサービスができつつあることを知ることができれば、不安そのものは消えることはありませんが、自分たちがこれからやらなければならないことが見えてきます。こうした具体的な制度やしくみについては、次回以降で詳しくお話ししていきます。


渡部 伸(わたなべ しん)

「親なきあと」相談室主宰、行政書士、社会保険労務士。

1961年、福島県会津若松市生まれ。東京都行政書士会世田谷支部と東京都社会保険労務士会に所属。2級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格をもち、世田谷区区民成年後見人養成研修を修了。世田谷区手をつなぐ親の会 会長。
主な著書に、『障害のある子の住まいと暮らし』(主婦の友社)、『まんがと図解でわかる障害のある子の将来のお金と生活』(自由国民社)、『Q&Aと事例でわかる障害のある子・引きこもりの子の将来のお金と生活』(自由国民社)がある。親なきあとへの備えをわかりやすく具体的に伝える内容で、大きな反響を呼んだ。
「親なきあと」相談室
http://www.oyanakiato.com/

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