発達特性と共に歩む方々のリアルな声を届ける特別連載。第7回は、現在20代の水野克隆(みずの かつたか)さんのお話です。前編では、好きなものや得意なこと、子どものころのこと、真剣に取りくみ学んできたことなどについて伺いました(取材:2026年1月24日)。
好きなことは追求し、とことん取りくんでみる
鉄道や乗り物は小さいころから好きでしたが、特に強い興味を持つようになったのは、小学5年生のころです。当時の副校長先生が、動画配信サービスで公開されている電車の発車メロディを、「水野くん、これ好き?」と聴かせてくれたことがきっかけでした。
そこから、もっと深く知りたいと思うようになり、関心は鉄道全体へと広がっていきました。首都圏の路線図は頭に入っていて、「この駅には、この路線のこの車両が走っている」といったこともわかります。学校の遠足や校外学習では、移動ルートや料金を先生や友だちに案内することもよくありました。
鉄道のほかアニメも好きで、イベントや期間限定ショップによく行きます。イベントでは声優さんの出演や朗読劇などが行われ、映像とは違い生で声を聴ける感動がありますし、同じ作品が好きな人たちが会場に集まる一体感も魅力です。
神社やお寺も好きで、御朱印を集めています。鳥居をくぐると現実から少し離れたような気持ちになり、心が落ち着きます。
また、コーヒーも好きで、小学校高学年ごろから飲み始めました。最初はミルクや砂糖を入れていましたが、中学2年生のときにファミリーレストランにあるドリンクバーでさまざまな種類のコーヒーを飲み比べしたことで、ブラックコーヒーにハマりました。
特別支援学校高等部の実習でパン工房のカフェ業務に関わり、プロからハンドドリップを教わったことで、家でも淹れるようになりました。現在は豆の種類や焙煎、抽出方法にも関心が広がり、専門店のセミナーにも参加しています。セミナーで学んだ方法で淹れたコーヒーを、家族に「おいしい」と言ってもらえたときはうれしかったです。
▲鉄道、アニメ、コーヒーなど、大好きなものがたくさんあり、その魅力を存分に語ってくれた克隆さん。取材当日も、「Electric Railway」という文字が織り込まれた、鉄道をモチーフにデザインされたネクタイを締めていた
苦手なことがあっても自分なりに折り合いがつけられるように
苦手なものは辛い食べ物で、刺激の強い味が得意ではありません。カレーは甘口で食べたり、牛乳を加えたりします。料理も得意ではありませんが、最近は母に教わって焼きそばやおかゆを作るなど、少しずつ練習しています。
小さいころは室内で遊ぶより外で体を動かすことが多く、よく友だちと公園に行っていました。結構不器用なので、ハサミや折り紙など手先を使う作業は苦手で、線に沿って切ったり角を揃えて折ったりすることができませんでした。また、のりのベタベタした感触がとても苦手で、幼稚園では自分だけスティックのりを使っていた記憶があります。頭にイメージしたものを絵で表現することも難しく、動物が未確認生物のようになってしまったりするので、上手に描ける人がうらやましいですね。でも、工作や美術については「完璧でなくてもいい」と自分なりに折り合いをつけられるようになりましたし、体操着をたたむことは家で繰り返し練習しました。
走ることは得意ではなく、体育の授業でタイムを測りながら何周も走ったときは、スタミナが持続せずに苦労しました。体格が大きく猫背だったこともあり、体の使い方に戸惑うことがありましたが、球技は好きでドッジボールや野球、サッカー、卓球は楽しくやっていました。縄跳びで二重跳びができるようになったことも、よかったと思っています。ただ最近は、運動不足が課題で、日常生活のなかで体を動かす方法を模索しています。
教科のなかでは音楽が好きで、歌うことが得意でした。今もカラオケによく行きます。特別な音楽教育を受けたわけではありませんが、楽譜を見ればおおよその音程をつかんで歌えます。5歳上の姉が弾くピアノをいつもとなりで聴いていたことや、電車の発車メロディを覚えるのが好きだったことなど、自然に音にふれる環境が身近にあったことが影響していると思います。
特に印象的だったのが、小学4年生のときに演奏した「シンコペイテッド・クロック(ゆかいな時計)」という曲です。ウッドブロックという打楽器の担当に立候補して選ばれ、指揮者の代わりにリズムを刻む重要な役割を任されました。「僕が主役だ!」と感じられた、忘れられない経験でした。
中学生になると、合唱の四声(ソプラノ・アルト・テノール・バス)すべてのパートが歌え、誰かの音程のズレに気づくことができました。パートリーダーを任され、「水野さんの声に合わせて」と言われていましたが、「声量を少し抑えて」と指導されることもありました。
また、百人一首大会でもリーダーを任され、家でCDや本を使って一年間練習し、百首を覚えました。一字決まりや六字決まりも理解し、友だちと情報を共有しながら取りくみました。好きなことは深く追求する性格だと思います。












