発達特性と共に歩む方々のリアルな声を紹介する特別連載。第5回は、現在20代で会社員として働く今藤 孝拓(こんどう たかひろ)さんにお話を伺いました。前編では、子どものころのエピソードや、悩み・苦手意識と向き合い、それを乗り越えるきっかけとなった出来事などについて紹介します(取材:2025年12月13日)。

苦手や不安があっても親や先生に支えられた

 保育所に通っていたころから、並行して地域の療育センターにも通っていましたが、当時の詳しい記憶はあまり残っていません。小学校・中学校はいずれも公立で、特別支援学級に在籍していました。小学校低学年のころから、自分には何かしらあるのだろうという認識はありましたが、特別に気にせずに過ごしていました。

 自分自身の特性を強く意識したのは中学1年生のときです。通常学級の生徒から特性について聞かれたことがあり、その質問にどう返したらいいのか戸惑い、以降は自分のことを話すのに消極的になりました。小学校でも似た経験があり、通常学級の生徒とはうまくコミュニケーションが取れず、結果的に話さなくなっていきました。一方で、特別支援学級のなかでは自然に会話ができていました。

 中学校の「体力づくり」という授業がきっかけで興味をもち、中学2年生の冬から陸上を始め、3年生からは本格的に部活動に参加しました。体力に不安はありましたが、走ることを中心とした活動は、結果的に始めてよかったと感じています。今では特定の選手を応援し、競技場へ足を運ぶこともあります。現在は競技をする側ではなく、観戦や応援を楽しみながら、ジムにも通って無理のないペースで体を動かしています。

 けれども、運動が得意だったわけではありません。小さいころから、初めて触るものや、一見簡単そうな行動でも、やり方がわからないことがありました。これは今も少し残っています。中学1年生のころには、靴紐が結べない、エプロンが着けられない、ワイシャツをうまく着られないといったことがあったほか、ステープラー(ホチキス)や結束バンドなどを使う細かい作業が苦手でした。そんなとき、馬鹿にせず、理解できるまで丁寧に教えてくれた親や先生の存在は、とてもありがたかったです。


▲中学校時代に陸上に興味をもったという孝拓さん。当時、部活動について担任の先生に相談したところ、もう少し身の回りのことを行えるようになってからにしたらどうかとアドバイスがあり、段階を踏んで、3年生から正式に陸上部に入部したと笑顔で話してくれた

給食は苦手でも、決まった味のファストフードなら大丈夫


 小さいころは食へのこだわりが強く、保育所ではほとんど食べられず、小学1年生のころは給食を一切食べずに母の作ったお弁当を持参していました。お弁当には必ず特定のメーカーのポテトフライを持たせてもらっていて、それがないとお弁当を食べることができませんでした。
 給食をほとんど受け付けず、白いものしか食べられないといったこだわりもありましたが、外食ではファストフード店の決まったメニューは問題なく食べられ、困ることはありませんでした。また、杏仁豆腐がとても好きで、よく食べていました。スーパーに行くたびに買って、家に常にストックがあったくらいです。

 現在は、食に対する苦手さはだいぶ改善して、いろいろなものを食べられるようになっています。きっかけは、小学2年生から給食に少しずつ挑戦したことでした。ご飯やパンだけから食べ始め、3年生くらいにはおかずも含めて給食が食べられるようになり、食への苦手意識が徐々に和らいでいきました。今も苦手な食べ物はありますが、以前に比べると食べられるものはかなり増えたと思います。

先輩や友人とゲームで盛り上がることも

 コミュニケーションに関しては、今も苦手意識があります。特に“雑談”が難しく、複数人での会話では「話して」と言われても何を話せばよいかわからず、黙ってしまうことがあります。そのために、「ノリが悪いな…」と言われてしまったりもしました。一方で、テーマが決まっている話し合いでは、意見を求められれば自分の考えを伝えることができます。

 目的のない雑談になると話題への入り方がわからず、話したい気持ちがあっても会話に加われないことがあります。子どものころから興味の範囲が限られ、好きなことに強く集中する傾向があったため、話題の引き出しが少ないとも感じています。今でもその影響で、雑談についていけない場面があります。


▲幼少期からこれまでの苦手だったことや食へのこだわりなどを、一つひとつ思い出しながら丁寧に話をしてくれた

 話しやすさは、相手や話題によって異なります。身近な人や自分がよく知っている話題であれば話しやすいのですが、知らない話題では質問はできても話を広げるのは得意ではありません。聞き役に回ることも多く、場面によっては会話に入らない選択をすることもあります。

 共通の趣味を通じた関係の人たちとは、自然に会話ができます。いろいろなモンスターが登場するゲームが好きな会社の先輩や高校時代の友人とは、キャラクター交換や対戦を楽しんでいて、月に一度くらい集まるのが恒例になっています。最近は友人と組んで初対面の相手と対戦することもあり、毎回盛り上がっています。