この連載の開始から、アニマルセラピーを中心として人と動物の関係に関わることをいろいろとお伝えしてきましたが、ここで今回と次回の2回にわたり、本・絵本について、テーマ別にご紹介します。今回はアニマルセラピーに関する本についてです。

動物と人の関係がもたらす可能性

■『動物たちが開く心の扉:グリーン・チムニーズの子どもたち』 大塚敦子 岩崎書店
 人と動物の関係について授業をもち始めたときに出会ったのがこの本です。グリーン・チムニーズの創設者であるサミュエル・B・ロス博士(Dr. Samuel B. Ross)の来日公演を聞きに行き、その場で販売されていた本でした。やさしさあふれる文章と素敵な写真に心ひかれ、ここから大塚敦子さんの本に関心をもつようになりました。以下のうち4冊は、大塚敦子さんの本です。

※米国のニューヨーク州に拠点を置く、情緒や行動面に問題を抱える子どもを教育・支援する機関。広大な敷地内で、動物や自然とのつながりを大切にしたアニマルセラピーのプログラムが行われている

■『犬、そして猫が生きる力をくれた』(大塚敦子/ 岩波書店)

 1999年に出された『犬が生きる力をくれた 介助犬と人びとの物語』に猫が加わったものです。刑務所の中で犬や猫のプログラムと関わることで、罪を背負った人たちがどのように変わっていくかを描いた一冊です。この本から、日本でも刑務所で盲導犬パピーを育てるというプロジェクトが生まれました。

■『〈刑務所〉で盲導犬を育てる』(大塚敦子/ 岩波ジュニア新書)
 島根あさひ社会復帰促進センター内での盲導犬パピー育成プログラムについて書かれた本です。プログラムの内容や参加する訓練生(受刑者)、ウィークエンドパピーウォーカーと呼ばれる週末にパピーを預かる市民ボランティアについて紹介するとともに、彼らがこのプログラムによって、どのような気づきを得ていくのかが書かれています。

■『ギヴ・ミー・ア・チャンス 犬と少年の再出発』(大塚敦子/ 講談社)
 千葉県にある八街少年院での保護犬訓練のプログラムについて書かれたものです。通称「GMaC(ジーマック)」と呼ばれるこの活動に参加することにより、受刑者である少年たちが変化していく様子が描かれており、少年たちと犬に心からの応援を送りたくなります。島根あさひ社会復帰促進センターと同様に、このプログラムの設立にも大塚敦子さんが関わっています。このプログラム立ち上げのもととなった、アメリカ・カリフォルニア州の少女たちのための更生施設について書かれた本もあります(『介助犬を育てる少女たち ―荒れた心の扉を開くドッグ・プログラム―』大塚敦子/ 講談社)。

■『動物がくれる力 教育、福祉、そして人生』(大塚敦子/ 岩波新書)
 大塚敦子さんの活動・執筆の集大成となる本です。罪を犯した人、障がいのある人、心や身体に病を抱える人など、社会の周縁で生きる人たちと動物との関わりや取りくみを紹介しています。海外や日本における人と動物の関係のさらなる可能性を示唆してくれる一冊です。


■『犬に本を読んであげたことある?』(今西乃子/ 講談社)
 これは、「R.E.A.D.®プログラム」といわれる動物介在教育が、どのようにして生まれたのかが書かれた本です。R.E.A.D.®プログラムとはReading Education Assistant Dog Programの略で、日本語では、「読書教育支援犬プログラム」となります。学校や図書館などで犬に読み聞かせをする活動で、現在日本でも少しずつ広がりを見せています。米国のユタ州で一人の女性が偶然から思いついたこのプログラム誕生のいきさつが書かれています。


■『ヘンリー、人を癒す 心の扉を開けるセラピー犬』(山本央子/ ビイング・ネット・プレス)
 保護犬のヘンリーとの出会いから、試行錯誤しながら徐々に心を通わせ、ニューヨークのど真ん中でアニマルセラピーの活動に従事する一人の日本人女性と1頭の犬の物語。著者の山本央子さんは現在、私と同じ専門職短期大学でトレーニングの授業に従事しています。絶対に力で犬をコントロールしない、人と犬が一緒に幸せに暮らすためのトレーニングを、動物看護学を学ぶ学生たちに教えています。


■『犬が看取り、猫がおくる、しあわせのホーム』(石黒謙吾/ 光文社)
 神奈川県横須賀市にある特別養護老人ホーム「さくらの里山科」では、ホームの中で犬と猫が高齢者とともに暮らしています。そのなかでも“看取り犬”として有名になったのが「文福」です。死期が近づいた高齢者の側に寄り添うというのです。人の福祉と動物の福祉の双方が守られ、おだやかな時間が流れている奇跡のような施設です。


■『人とペットの心理学 コンパニオンアニマルとの出会いから別れ』(濱野佐代子/ 北大路書房)
 濱野佐代子さんは獣医師ですが、公認心理士でもあり、特にペットロスの専門家です。この本には、人とペットとの関係、そこから得られるもの、子どもとペットの関係、そしてペットロスについて書かれています。少し難しいかもしれませんが、人と動物の関係について勉強したい方にはおすすめです。


■『知りたい! 考えてみたい! どうぶつとの暮らし』 川添敏弘監著 山川伊津子・堀井隆行・橋本直幸 著 駿河台出版
 これまでの連載記事のなかでもご紹介しましたが、この本はそれぞれの専門家が自分の得意分野を執筆した共著です。私は人と動物の関係、そして今回の連載では紹介できませんでしたが、「Veterinary Social Work(動物医療ソーシャルワーク)」について書きました。この本は教科書として、そして一般書としても読んでいただける内容となっています。


※次回は続編として、主に補助犬とペットロスをテーマにした本・絵本をご紹介します。


山川 伊津子(やまかわ いつこ)

ヤマザキ動物看護専門職短期大学 動物トータルケア学科教授。
社会福祉士、精神保健福祉士。
動物を介在させた人の福祉とそれに伴う問題をVeterinary Social Workの視点から教育・研究し、小学校や高齢者施設で活動を実施している。

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