このままの生活で大丈夫なのかと保護者が子どもの日常に不安を感じることがあります。このコーナーでは、医療・福祉・教育(保育)など、さまざまな現場で経験を積んだ先生方が、発達特性のあるお子さんとの日常で「困った!」と感じる場面について、保護者の気持ちに寄り添いながら、一緒に考えていきます。
※本コーナーへお気軽にお悩みをお寄せください。採用連絡は掲載をもってかえさせていただきます(お悩み送信フォームはこちら→https://x.gd/7d8FN)
●今回のお悩み●
ゲーム依存にならないかが心配です
自閉スペクトラム症(ASD)の特別支援学校に通う小学6年生ですが、毎日テレビゲーム三昧で、学校が終わったらすぐにゲームがやりたいので放課後等デイサービスにも行きたくないと言っています。時間も守れず、注意すると癇癪がひどくて、依存しないかが心配です。
依存が心配――。“ゲームゼロ”ではない、別の目標設定が大切
「親子関係を守る」ために必要な、具体的な支援を行いましょう
ご相談ありがとうございます。心配ですよね。お母さんが「このままゲーム依存になってしまったらどうしよう」「注意すると癇癪が激しくて、もう限界!」と感じてしまうのは当然です。毎日向き合い続けているからこそ、心も体も消耗します。ここまで踏ん張ってきたお母さん自身を、まずは認めて・ほめて・大事にしてください。
「心配できる」「助けを求められる」それ自体が、すでにすごいことなんですよ。
現在のお子さんは「ゲームが好きでわがまま」なのではなく、ゲームが気持ちを安定させる最も確実な方法になっている可能性が高いのだと考えられます。特別支援学校へ通われているお子さんの場合、特に「切り替える」「時間を守る」「理由を理解して我慢する」といった力は、年齢のわりにとても難しくなります。
時計の「あと5 分」が実感と結びつきにくく、止められた瞬間に脳がパニックのようになり、癇癪につながりやすいと考えられます。
「放課後等デイサービスに行きたくない」という気持ちは、“怠け”ではなく負荷を避けたいサインであることが多いといえます。 移動、対人、活動の見通し、環境の刺激が重なると疲れやすく、ゲームをするほうが「予測できて安心」「成功しやすい」「一人で完結できる」ため、そちらへ強く傾きます。
今後の目標は「ゲームをゼロにする」ではなく、生活がまわり、親子の関係が守られることです。そのためには、以下の段階が大切だと言えるでしょう。
① 癇癪を減らす
② 切り替えの成功体験を増やす
③ ゲーム以外の心の安心を増やす
具体策の第一は、ルールを少なく、短く、見えるかたちにすることです。ことばで説得して守らせるより、守れるような環境に整えます。
たとえば、平日は「帰宅後に1 回」「夕食後に1 回」のように回数で管理すると成功しやすくなります。1 回の長さは、最初は10〜15 分など短めに固定し、終わり方を以下のような同じ型に統一します。
「あと5分」の予告 →タイマーが0 →「おしまいカード」を提示 →次の行動※へ
※おやつや入浴など、行うべき行動
この一連の行動がうまくいったときには、ほめられるということが分かるように、安心を置くのがコツです。短くていいので「できたね」「終われたね」と認めてほめます。できた経験が増えるほど、次も成功しやすくなります。
具体策の第二は、癇癪への対応を「短く、一定」にすること。癇癪中は脳が受け取れない状態なので、長い説明や説得は逆効果になりがちです。声かけは「今は安全」「落ち着いたら話そう」など短い一言にして、刺激を減らし、安全確保を優先してください。
そして落ち着いた後にだけ、「戻ってこられたね」「手を出さなかったね」と子どもができた点を認めてほめます。親が叱る役ばかりにならない工夫が、ゲーム依存の予防にもつながります。
具体策の第三は、放課後等デイサービスに「行く/行かない」の二択にはせず、行けるかたちに再設計することです。
たとえば、「滞在時間を短くする」「活動を得意分野に寄せる」「静かなスペースを確保する」「入室手順を固定する」など、負荷を下げると通えることがあります。放課後等デイサービス側にも「見通し提示」「切り替え支援」「成功体験の記録」を具体的にお願いすると連携が進みます。
最後に、ゲームを取り上げると荒れてしまうときは、ゲームが唯一の安心になっている合図です。
だからこそ、ゲーム以外にも落ち着ける安心の柱(短い散歩、重めのクッション、決まった音楽、温かい飲み物など)を少しずつ増やしてください。お母さん自身のケアについても同じことです。
完璧をめざさず、「今日はここまでできた」を認めて・ほめて・大事にする――その積み重ねが、親子の明日を確実に楽にします。そして何よりお伝えしたいのは、発達障がい支援は行動を直す支援で終わらせず、心の支援が土台だということです。
ゲームの時間を減らすことが最終目的ではありません。
親子で心を守り、安心を積み上げ、少しずつ「できる」「分かる」「落ち着ける」を増やしていく。その先に、お子さんが30歳になったときに、たとえ不器用でも、自分の人生を自分の足で歩みながら、「生まれてきてよかった」と言える未来があります。お母さんとお子さんが、心を元気にしながら、親子でそのゴールを一緒にめざしていきましょう。
今回のお悩み回答者: 津守 慎二(つもり しんじ)さん
- 一般社団法人 日本医療福祉教育コミュニケーション協会常務理事。日本小児心身医学会員。高校教員免許
1987年から岡山県で複数の専門学校講師を務め、2011年、知人の紹介で発達障がい児支援施設を見学し、社会における発達支援の重要性を知る。2012年、岡山県倉敷市に「学習支援レインボー教室」を設立。小児医療やカウンセリングについて学びを深め、全国で1万5千名以上の発達障がい児支援者に向けてセミナー開催。
現在は教室運営にて約250名の子どもを支援するかたわら、指導者の養成、講演活動などで全国を飛びまわる。子どもの心を元気にする専門家でもある。


















