外出先で思いがけないお子さんの行動に、どう接したらよいのか不安になってしまうことは少なくありません。このコーナーでは、医療・福祉・教育(保育)など、さまざまな現場で経験を積んだ先生方が、発達特性のあるお子さんとの日常で「困った!」と感じる場面について、保護者の気持ちに寄り添いながら、一緒に考えていきます。
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●今回のお悩み●
靴を投げる息子との外出が苦痛です
5歳の自閉スペクトラム症(ASD)の息子との外出に悩んでいます。はいている靴も靴下もいつもすぐに脱いで、投げてしまうので外出がとても苦痛です。先日は電車のホームで投げてしまって本当に困りました。いつかなくなるのでしょうか。ことばがあまりわからない息子にどのように注意すればよいでしょうか?
外出時の“気になる行動”――感覚特性から見えるサインとは?
本人なりの理由を「感覚」の視点で捉えてみましょう
外出は息抜きやさまざまな経験にもなるので、息子さんにとっても、ご家族にとっても重要な活動ですね。そのため、安全に、安心して、子どもと一緒に外出できることをご家族は願っているのではないかと思います。
対応として重要なことは、「子どもなりの理由」に合わせて対応することです。同じ行動やふるまいでも、その行動の理由は一人ひとりの子どもによって異なります。そして、その理由は、まわりの大人の目に見える部分にあるとは限りません。
子どもたちの気になる行動の背景の一つに、感覚に対する反応の違いがあります。
外出時に靴も靴下も脱ぐということは、足から入力される触覚に対する「快」「不快」がはっきりしていることを示していると考えられます。靴も靴下も脱いだ状態の足の感覚を「快」と感じやすく、本人は「裸足のほうが気持ちいい!」と感じたので、自ら脱ごうとしているのかもしれません。
もしくは、靴と靴下を履いた状態の足の感覚を「不快」と感じやすく、本人は「靴と靴下の感覚が嫌!」と感じたので、その感覚から逃れようとして裸足になっているのかもしれません。
いずれにしても、息子さんは足からの触覚に対する反応が人一倍見られやすく、その結果として、靴と靴下を脱ぎやすいのではないかと考えられます。
このような場合、まずはまわりが感覚に対する本人の「快」「不快」を認め、無理に靴と靴下を履かせようとしないことが重要です。無理に履かせようとしても、本人は嫌がり、行動がどんどんエスカレートしてしまう可能性があります。
とはいえ、裸足のまま外出するとケガをするリスクもあります。
感覚に対する反応は、感覚に対する本人の捉え方(認知)によって変わることがあります。たとえば、触覚過敏がある人でも信頼している人との接触であれば受け入れやすくなりますし、口腔感覚の過敏があり偏食がある人でも、自分で作った食べ物であれば食べられるといったことがあります。
そのため、本人が受け入れやすい生地や素材、締め付け具合、皮膚の覆われ方が異なる靴や靴下を本人と探し、何を履くかは本人が決定できると、靴と靴下を履いても受け入れやすくなるかもしれません。
たとえば、靴下の生地はコットンやリネンのような毛羽立ちしやすいものよりも、ウールやシルクといった肌触りのよい生地のほうがよいといえるでしょう。
また、縫い目の少ないシームレスの靴下も受け入れやすいかもしれません。靴では、履くときにマジックテープをきつく締めていないか、場合によっては履き口が広くなるようにサンダルを使用するのも一つの方法です。
今回は感覚の視点でお子さまの気になる行動を捉えましたが、「子どもなりの理由」は一つとは限りません。そのときの状況や本人の心理的な状態も関係しているかもしれません。感覚の視点も含めて、「本人はどう感じているのだろう」と考えながら対応してみてください。
息子さんとご家族で、安心していろいろなところへ外出できることを願っています。
今回のお悩み回答者: 東恩納 拓也(ひがしおんな たくや)さん
- 東京家政大学 健康科学部 講師。作業療法士、特別支援教育士SV
長崎大学医学部保健学科で作業療法学を専攻し、2014年に卒業後、国立病院機構長崎病院、社会福祉法人聖家族会みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家で臨床経験を積む。2020年、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科で博士号(医学)を取得。2021年より東京家政大学健康科学部で助教として勤務し、2025年より現職。発達障がい、特に発達性協調運動症(DCD)支援を専門とし、教育と臨床をつなぐ実践的な研究に取りくんでいる。作業療法や特別支援教育について、実用的な知見を保護者や教育者にわかりやすく伝えることに定評がある。


















