怒りを抑える最初の一歩は、自分自身の心と体を整えること

Q3 怒りを感じたときにすぐできる「立ち止まる」ための方法は?

A3 最初の6秒をやり過ごすか、一度その場を離れましょう


 よく知られているのが「6秒ルール」です。怒りのピークは最初の6秒しか続かないといわれます。ですから、この6秒をなんとかやりすごすだけで、理性が働きやすくなるのです。6秒の間、深呼吸をしたり、「私は今、怒っているな」と自分の状況を客観視したりするといいでしょう。また、怒っているときは感情を司る右脳が過剰に活動しているので、左手(右脳は体の左側を制御するため)をぎゅっと握って右脳を落ち着かせるのもいい方法です。

 もう一つの対処法が、その場を離れることです。ほかの家族がいればその人に対応を任せ、自分は別室などに移動して子どもと距離を取ります。自分一人の場合も、子どもが安全な場所にいて、自分や周囲に危険なことをしているのでなければ、短時間別室で心を落ち着かせるといいでしょう。


 「アンカーリング」という感情をコントロールするための方法もあります。これは特定の動作やことばを望ましい感情の状態と結びつける方法で、そのためのスイッチになるのが「アンカー(錨)」です。

 たとえば、リビングの壁など、よく過ごす場所に怒った顔のシールを貼っておきます。目線が上がると呼吸が深くなるなどして冷静さを取り戻しやすいので、なるべく見上げる位置に貼ってください。
 怒りそうになったら、まずそのシールに目を向けます。すると、「あ、自分は今、子どもを怒ろうとしている。落ち着け、落ち着け」と冷静になることができるのです。

 大事なことは、これらの方法を何度も繰り返し練習をすることです。先ほど述べたように、怒りを抑えるのは難しいことですし、人は覚えたことをすぐ忘れるものなので、一度ではなかなかできるようにならないからです。

 反対に、怒りを抑えられなかったからといって後悔し、自分を責める必要もありません。「まだまだ練習が足りないな。次はもっとうまくやろう」と気持ちを切り替えてください。怒った自分を責めるのは、これまた処罰感情からくるもので、まったく無意味なことです。それよりも「今度こうきたら、こう返してみよう」と、失敗を次に生かす方法を考えましょう。

 子どもが1歳なら保護者も「親1歳」。子どもはけっこうたくましいので、保護者が多少失敗してもちゃんと育っていきます。子どもも保護者も一緒に失敗しながら、その子に合う育て方を見つけていきましょう。

Q4 家族みんなが無理なく日常生活に取り入れられる「怒らないための工夫」を教えて

A4 各自で自分の怒りのパターンを記録してみましょう


 家族それぞれが、自分の怒りのパターンを記録するのがおすすめです。たとえば、自分は疲れがたまる夕方にイライラしがちだとか、家より公共の場のほうが人目を気にして口調が強くなるなど、自分の怒りやすい時間帯や場所、理由がはっきりすると「ここは気をつけよう」と備えることができます。

 また、自分は怒りのレベルが常に高い状態にあると自覚できれば、それを沸点まで上げない工夫もできるでしょう。

 子どもに何かをやめさせよう、禁止しようとすると怒りが募りやすいので、保護者がしてほしくないことを、子どもが自然とやめるように工夫するのもいい方法です。

 たとえば、こだわりが強く、携帯で同じような動画ばかり見ている子どもには、携帯の画面表示をグレースケール(モノクロ)モードに設定してみましょう。モノクロ画面は地味で刺激が少なく、動画を見てもあまり楽しくないため、自然と視聴時間を減らす効果があります。

 保護者が苦手なことにチャレンジするのもいい方法です。すると、「頑張っているのにできない」ときの子どもの気持ちがよくわかります。子どもが、まわりからあれこれ指図されてつらい気持ち、いやなことを避けようとする気持ちにも、少しは寄り添えるようになるのではないでしょうか。

 これらの方法を試す前にぜひ知っておいてほしい大前提があります。それは、保護者が育児と仕事の両立などでストレスいっぱいになり、自分の生活がガタガタの状態にあると、発達特性のある子にしっかり向き合うのは難しい、ということです。そういったとき、人は体のホルモンバランスも崩れがちになるので、心が感情に振り回されてしまいます。

 ストレスを和らげる方法はいくつかありますが、手軽なのがアロマテラピーです。欧米ではアロマオイルは薬に準じた扱いをされ、ストレスコントロールにもよく用いられているものです。

 いくつかのアロマオイルの香りを嗅いでみて、「すごくいいにおい」と感じるものは、「自分に足りていないもの」を効能としてもつことが多いので、ぜひ生活に取り入れてみましょう。よくわからないときは、先行きが見えない不安を解消するとされる「マンダリンオレンジ」の香りがおすすめです。

 好きな音楽をかける、プチ贅沢をして自分にご褒美をあげる、などもいい方法です。そうやって自分で自分の機嫌を取り、幸せホルモンと言われるセロトニンやオキシトシンを意識して増やしていきましょう。

 さらに、物事のとらえかたをちょっと変えてみるのもいい方法ですよ。子どもが失敗したら、怒るのではなく、「このエピソード、人に話したら絶対ウケるネタになる!」と笑いに変えていくのです。

 発達特性のある子はネタの宝庫ですから、ありがたくいただき、ママ友との会話で披露したり、日記に綴ったり、ブログで発信したりしてみるのもよいでしょう。

 やがて「もっとおもしろいネタないかな」と思えるようになれば、大成功! 失敗したとき、目をつり上げて怒るのではなく笑い飛ばす・・・そんなふうに保護者が明るく前向きに変われば、子どももがらっと変わりますよ。もちろん、自分の失敗もどんどん笑い話にしていきましょう!