小学校の算数では、お金をかぞえること自体を目的とした単元はほとんどありません。お金は、低学年で学習するくらい取り(けたの概念)を教える際の具体的な題材として扱われる程度です。

 しかしながら、キャッシュレス化が進む現代においても、生活のなかでお金を扱うことは重要なことです。子どもがお金の出入りを実物を使って実感することは、金銭感覚を養ううえで大切です。そこで、ご家庭でのお金の読み方や数え方について、親子で楽しく学べる具体的な方法をご紹介したいと思います。

「お金のおもちゃ」を用意しよう!

 じつは、文部科学省が定める学習指導要領において、算数科の目標を「数学的思考力の育成」に絞っています。その結果、具体的な金銭感覚の育成は小学校の算数ではほとんどなく、家庭や生活科などのほかの学習の場で担うことが期待されています。

 また、算数でお金が主なテーマにならない背景には、「量感」の問題もあります。たとえば、100円というお金は、長さや重さのように1円の100倍の視覚的な量感を伴いません。お金の計算は、あくまで10進法による記号的な操作であり、抽象的な数学的思考の育成に直接結びつきにくいという側面があります。

 そこで今回は、ご家庭で金銭感覚について学べる方法をお伝えします。

 本物の貨幣を使って学習するのも有効ですが、ネット通販などで販売されている模造貨幣(コイン、紙幣)の利用をおすすめします。これにより、紛失や取り扱いへの過度な心配をすることなく学習に取りくめます。


図1 お金のおもちゃ
【参考】お金の模型セット(ナナミ)

●「位取り表」を使ったお金の整理と数え方

 学校で百の位、千の位の数字を読む学習をするタイミングに合わせて、お金の整理と数え方を子どもに学ばせましょう!

 図のような「位取り表」に貨幣を整理して入れることをおすすめします。五百円玉、五十円玉、五円玉がどの位に入るかについては、明確なルールとしてしっかりと教えてください。


図2 位取り表

●両替の練習

 次に大切なのが両替の練習です。たとえば、「5円玉2枚を10円玉に替える」、「500円玉1枚と100円玉5枚を1,000円札に替える」など、等価交換を通して整理する方法を学び、合計額がすぐに言えるようにしましょう!


図3 位取り表で両替の練習

●学習の進め方

 学習は、以下の順番で進めると効果的です。

・お金をかぞえる:目の前にある貨幣の合計金額を言う。
・金額をそろえる:指定された金額になるように貨幣を準備する。

 金額をそろえる際には、「5円玉、50円玉、500円玉を積極的に使ってみよう!」、「できるだけ少ない枚数でそろえてみてね!」といった指示を加えることで、高い金額の貨幣への意識や、効率的な数え方を促すことができます。