重度の障がい特性がある場合、周囲の理解を得たり環境調整を行ったりするのが難しいことから時に“二次障がい”を引き起こしてしまうことがあります。寄り添うだけの介入では、その要因が複雑に絡み合い特定できないことが多いため、うまくいくものではありません。しかし、別の行動を身につけてもらうことで二次障がいの緩和につながることがあります。その方法の一つに犬との交流があると私は考えています。今回はそのような事例を紹介します。
自分の領域を守る行動や攻撃的な行動が目立っていたTさん
Tさん(男性・20代・自閉スペクトラム症)は、入所施設で共に暮らす方が近づくと、噛みついたり押したりする行動が見られたため、ロビーでの活動に参加できませんでした。自由時間は、一番奥にある居室のベッドの上に座って過ごしてもらっていました。すると、居室の入り口やベッドのまわりに見えないバリアを張り、食事以外で移動することを拒むようになりました。さらに、バリアに人が侵入すると攻撃するようにもなってしまいました。
Tさんの居室に入ると唾が飛んできます。「ぺっぺっ」と繰り返し飛ばされます。距離をとると何事もなかったかのようにベッドの上で静かに過ごし始めます。このままでは対人関係に支障をきたしたままで、成長の機会を失ってしまう懸念を抱えていました。施設のスタッフは“唾攻撃”に遭わないように遠くから声かけをして、上手に関わりをもっているようでした。












