子どもの特性をよく知る保護者の意見や役割が重要です
Q3 どう治療を進めるかは歯医者さんが決めるの?
A3 保護者とよく相談しながら、いろいろな裏ワザを駆使して進めます
子どもの特性や性格をよく知る保護者の意見はとても大事ですので、歯科医は保護者とよく相談して治療方針を決めます。歯のクリーニングについても、器具で体を固定してでもしっかりきれいにするか、使わずにできる範囲を少しずつでよしとするか、保護者によって考え方は違うからです。
もちろん、歯科医側からもできる限りの提案をしてくれるでしょう。むし歯治療は別として、歯石取りなどは仰向けが苦手なら座って行うこともできますし、治療用のイスが苦手ならマットや普通のイスで行うこともできます。幼児なら保護者の膝の上に寝かせる方法もあるんですよ。
また歯科医は、一つでも子どものできることを増やす努力をします。今日は前歯を5秒磨けたから、次回は10秒磨けるようにする。その次は奥歯を5秒磨けるようにするなど、スモールステップで治療やケアができるように徐々に進めていきます。
むし歯が多い場合やパニックになって暴れてしまうお子さんには、心身障害者口腔保健センターや大学病院などの第三次医療機関で、全身麻酔を実施しての治療をおすすめすることもあります。全身麻酔に抵抗感がある保護者もいると思いますが、第三次医療機関には麻酔科医や口腔外科医なども常駐しているので、安全性は高いといえます。
全身麻酔なら、複数のむし歯治療や難易度の高い治療も一度に済ませることができますので、「歯医者さんに何度も行く」ことによるお子さんのストレスや体への負担、「嫌がる子どもを歯医者さんに連れて行く」という保護者の負担も軽減できます。
むし歯の治療は第三次医療機関、クリーニングはかかりつけ歯科医院と病院を使い分けるのもよい方法です。そうすれば、かかりつけの歯科医院には楽しく通ってむし歯予防ができると思います。
Q4 感覚過敏の子にはどういった工夫をしてもらえるの?
A4 子どもが嫌がるものはなるべく使わず、徐々に器具に慣らしていきます
当院を例に挙げると、音に敏感な子のためにヘッドフォンを用意し、なるべく音の出ない治療を心がけています。むし歯を削るときはどうしても機械を使う必要がありますが、歯石取りなどは手でかき取る道具を使い、唾液を吸い取るバキュームの使用も最小限にして、こまめにうがいをしてもらうようにしています。
においに敏感な子には、歯磨き粉なしで歯磨きの練習をさせたり、味のしない歯磨きペーストを使ったり、反対においしい味のついた歯磨きジェルを使ったりもします。家でも試してもらえるよう、歯磨きジェルのサンプルを渡すこともあります。歯科医が使う手袋のゴムっぽい感触やにおいがダメな子には、「口には指を入れないから、大きく口を開けてね」と説明します。
触覚過敏がある子には、刺激を感じにくいところから触れていき、徐々に口の中まで進めるようにする手法が一般的です。その際は、まずことばで機械について説明し、実物を見せて、本人にも触ってもらいます。バキュームの場合は「お口の中の水を吸い取る機械だよ」と説明しながら、実物をみせます。次は子どもに手を出してもらい、手の甲をバキュームで吸ってみる。おもしろいと感じてくれたら、頬を吸ってみる。こうして、体→頬→唇→口の中と、順番に触れるようにしていきます。
▲聴覚過敏のお子さんにはイヤーマフをしてもらい、治療を行うこともある
Q5 ことばのやりとりが難しい子にはどのように治療を進めていくの?
A5 保護者にも治療に参加してもらいます
当院では、発達特性のある子の場合、コミュニケーション能力の程度にかかわらず、保護者に子どもと一緒に治療室に入ってもらい、一緒に治療を進めることになります。保護者に子どもの口の中の状態を知ってもらう必要がありますし、「口を開けて」というひと言でも、歯科医が言うより保護者が言うほうがスムーズに口を開けてくれることが多いからです。
また、何といっても子どもの特性を一番よく知るのは保護者です。呼吸が荒いなどの危険な徴候が見えたら、すぐストップをかけてもらうようにもお願いしています。
今何をされているのか、これから何をされるかわからないと怖いという子も多いので、鏡を持たせて口の中の作業が見えるようにしたり、アニメ動画や絵カードを使って治療ステップを説明してから治療を始めたりすることもあります。

▲機械のブラシを怖がる場合は、いきなり口の中に入れずにまずは手に触れてみて痛くないものだと理解してもらってから、スモールステップで進めていく











