皆さんの中には、動物と触れ合うことで心が癒された経験をしたことがある方がたくさんいらっしゃるかと思います。動物とのふれあいは、心とからだの健康に良い影響があるとして、医療や福祉などの現場で取り入れられています。そんな活動や療法を一般的に「アニマルセラピー」と呼んでいます。

どんな種類があるの? 動物が人に与える影響って?

●アニマルセラピーの種類
 アニマルセラピーと聞いて、皆さんはどんなことをイメージしますか? アニマルセラピーと一言でいっても、目的や取り組み方の違いによって、いくつかの種類があります。現在日本で行われているアニマルセラピーには、大きく分けて3つの種類があります。

 1つ目は、主に高齢者施設などで利用者の方々の生活の質の(Quality of life: QOL)を高めることを目的に行う「動物介在活動(Animal Assisted Activity:AAA)」で、“ふれあい活動”と呼ばれるものです。

 2つ目は、医療現場において、リハビリや心理療法など治療のための補助として行う「動物介在療法(Animal Assisted Therapy:AAT)」で、 “代替補完療法”となります。

 3つ目は、小学校などの教育現場に動物を介入させて、子どもたちの心の成長ややる気を促すことを目的とする「動物介在教育(Animal Assisted Education:AAE)」です。


●動物が人に与える影響
 皆さんの生活の中で最も身近な動物はといえば、家庭で飼われているペットではないでしょうか。多くの人がペットを家族の一員のように思い、一緒に暮らしています。ではどうして人は動物と一緒に暮らしたがるのでしょう? 実はペットを飼うことにより、人は気づかないうちに、動物からさまざまな良い影響や効果を与えられていることがわかってきました。その効果について、いくつかご紹介します。

 ペットを飼う人に、どうして動物を飼うのかを尋ねてみると、多くの人が「ペットといると心が癒されるんです…」と答えます。これは動物が人に与える「心理的効果」と呼ばれているものです。

 また、動物を散歩に連れていったり世話をしたりすることは、必然的に人は身体を動かすことになり、人にとって心身の健康状態に良い影響をもたらします。さらに、ペットと一緒にいると“幸せホルモン”と呼ばれるオキシトシンという物質が脳内に発生することがわかってきました。これらは「生理的・身体的効果」と呼ばれるものです。

 さらに、動物がいることで家族同士の会話が増えたり、ペットと一緒に外に散歩に出れば、知らない人と会話する機会が増えます。つまり、ペットは人と人とをつなぐ役割をはたしてくれます。これは「社会的効果」と呼ばれています。

 そして、動物が人に与えてくれるこれら3つの効果を社会の中で活かしていく実践的な活動が「アニマルセラピー」であると考えられます 1)。


図 ふれあい活動を行っている様子 (介護付有料老人ホーム カーロガーデン大塚)