車椅子で生活していると、行動の範囲が狭くなってしまいます。目線も低くなり、話をする際に相手を見上げる機会も多くなります。リズムよく歩くことによる物理的な刺激の心地よさは、乗馬の醍醐味となり多様な効果をもたらしてくれます。今回は、乗馬によるアニマルセラピーについて、事例とともにご紹介します。

馬に乗ることの効果

 馬は体格が大きく危険を伴う動物で、障がいのある方にとっても怖い存在だといえるでしょう。しかし、セラピーで利用する馬は人慣れしているので、スタッフの指示に従っていれば安全に活動することができます。

 そして、馬上に座り馬の怖さを克服することで、利用者の目は輝き、緊張していた表情筋が緩み、笑顔になっていきます。これまでにない目線の高さは、恐怖の克服とともに、利用者の自尊心を向上してくれます。さらに、馬は人よりも体温が高く、安心感ももたらしてくれます。


●乗馬のリズム
 馬の歩行が始まると、利用者は安定感を求めるため身体の筋肉に力が入ります。普段使用しない筋肉を活用することで股関節が柔らかくなり、歩幅や歩くスピードに影響を与えてくれます。また、体幹(背筋)を伸ばすことで、心地よい刺激(リズム)が身体全体に伝わってきます。その心地よい一定のリズムは、セロトニンやドーパミンなどの脳内ホルモンを活性化してくれます。また、有酸素運動により、気分は爽快になり、心と身体の健康につながっていきます。


●繰り返しの乗馬
 レクリエーションとしての乗馬はすばらしいものですが、繰り返し乗馬を楽しむことで、さまざまな身体的効果を得ることができます。体幹が鍛えられて身体を支える力が強くなるだけでなく、股関節の可動域が広がり、やわらかくなることでバランスがよくなり、転ぶなどの事故の軽減につながります。

 乗馬をはじめた初期の段階では、恐怖心から目線は馬の頭など近いところを見ていますが、声かけにより少しずつ頭が上がる時間が長くなっていきます。最終的には、目線は遠くの景色に移っていきます。顔が上がるころには、笑顔があふれるようになっています。