今回からスタートするのは、発達特性と共に歩む方々のリアルな声を届ける特別連載です。第1回は、現在20代で会社員として働く小野 詩菜(おの しいな)さんに、子どものころの体験から現在の仕事のことまで、困りごとや悩み、それらをどう乗り越えてきたのかを伺いました(取材:2025年9月20日)。
発達特性は個性の強いキャラと同じかも?
子どものころは、普通の幼稚園に通っていました。ただ、最初に受けた園には落ちてしまって、2回目に受けたのが発達特性に理解のある先生がいる幼稚園でした。
小学校は一度転校しています。転校先でも支援学級に入りました。中学校も公立の支援学級に在籍し、その後は特別支援学校の高等部に進学しました。
発達障がいや特性ということばを自分のこととして意識し始めたのは、小学5〜6年生のころでした。通常学級の子に「障がいって何?」と聞かれたことがきっかけで、自分の障がいのことを考えるようになったと思います。
母からもそれ以前から言われていたようですが、あまり覚えていません。家に帰ってその話をしたら、母に「障がいのことで何か言われても、考えないほうがいいよ」と言われて、「そういうものなんだ」と初めて知った感じでした。
中学1年生のときには、療育センターで母と一緒に主治医の先生から改めて自分の障がいについて説明を受けました。でもそのときはまだ自覚がなく、正直あまりピンときませんでした。それでも、少しずつ自分の特性を理解するようになって、中学2年生くらいのときには「これは個性かもしれない」と思うようになりました。
私は、ほかの人と違うことをおもしろいと感じたので、「個性があるのはいいことだ」と思えたんです。ちょうどそのころ、アニメやゲームが好きになって、登場するキャラクターたちはみんな個性が強いので、「自分もそういう感じかも」と思って納得できました。
運動会の音楽は騒音に聞こえた
子どものころのことはあまり覚えていないのですが、私が小学1年生のときに母が作ってくれたノートが残っています(図)。
そこには、朝の支度や昼休みの過ごし方など、1日の流れが絵と文字で分かりやすくまとめられていました。私は耳からの情報を理解するのが苦手で、言葉だけでは流れをつかみにくかったので、母が目で見て分かるように工夫してくれたんです。
休み時間の欄には「トイレや水飲み場に行かなくて大丈夫なら、友達と遊んでね」「友達と遊ばないときは、折り紙をするといいよ」など、その時にするといいことが具体的に書いてありました。
▲小学1年生のときに詩菜さんのお母さんが作成した学校での行動手順ノート
▲特に困ることが多かったという休み時間の過ごし方が書かれたページ
小学1年生のころは母に付き添ってもらって学校に通っていたので、そのノートを母が見せてくれて、それを確認しながら行動していました。母は「本当は学校の先生がやってくれればいいのに」と、少し怒りながらこうした手順やルールを書いていたそうです。そのころが一番大変な時期だったと思います。
騒がしいのが苦手で、ザワザワした環境では話の内容が頭に入ってこなかったので、母がよく耳元ではっきりと話してくれました。電車の音も苦手で途中の駅で降りようとしてしまったり、幼稚園の頃は運動会のダンスの音楽が騒音のように聞こえて参加できなかったりもしました。
▲電車移動の際に違う駅で降りようとしてしまう詩菜さんの横で、お母さんがこのカードを見せて見通しをもたせてくれていたのだそう
けれども、音楽自体は好きです。小さいころは祖母にピアノを教わったこともありますし、音楽に親しむようになったのは母の影響です。今ではボーカロイドの初音ミクさんのライブに行くほどのファンです。
▲詩菜さんが実際にしている場面を撮影して作成したオリジナルカード。しかし、詩菜さんにとっては手順が明記されていないために、「このカードだけを見ても、何をどのようにすればよいのかがわからなかったので、失敗作だった(笑)」と教えてくれた
▲行動する順番が理解しやすいように作成されたオリジナルの視覚的支援ツール。詩菜さんが大好きな「初音ミク」「マンガ」をモチベーションにして行動できるように工夫されている
小学校では、英語と音楽の授業だけは通常学級で受けていました。みんなで一斉に何かをするのは楽しかったのですが、グループで話し合う活動は苦手でした。子どもよりも大人のほうが話すことが分かりやすく、安心感がありました。
遊具で遊んでいたら「邪魔だよ」と言われたり、つい人の顔をじっと見てしまって「なんで見てるの?」と聞かれたりして、通常学級の子が少し怖いなと思ったこともありました。
その後、中学や高校で出会った友人たちは、自分と立場が同じだなと感じることが多く、今もずっとなかよくしてくれている子がいます。友人は多くありませんが、ほかの人には話しづらいことも打ち明けられて、いい関係が築けていると思います。












