重度の障がいのある方々が実際に動物と交流することで、その人の行動がどのように変化していったのか、事例を紹介したいと思います。
今回ご紹介するのは、月に1回、入所施設へ犬を連れていくアニマルセラピー活動の事例です。ご家庭とは事情が異なりますが、犬との関わりで適切な行動が身についていった事例になります。
「アンナ」という魔法のことば
私が知るAさん(男性・30代・自閉スペクトラム症)は、ベンチに座り、ずっと丁寧にアンナ(イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル)の背中をなでている印象がありました。しかし、Aさんはアンナと出会うまでは、誰とも交流することなく、施設の居室で一人で過ごしていたそうです。
私がセラピー活動を十分に理解していないなか、私の恩師である日本知的障害児者療育犬研究会(別称:日本療育犬研究会)の故・横室純一氏の活動に初めて参加した日のことです。施設に着くなり、横室氏が大声で叫びます。「おーうぃ、アンナが来たよー」。
Aさんは奥の居室から、小ホールへ続く廊下の真ん中に出てきます。そして、リードを持つことを要求して、それを受け取ると空いているソファに腰掛けてアンナをなで始めます。真剣ですが、やわらかい表情をしていました。











