「情緒の安定」って?
適度の興奮は、時に子どもに良い影響をあたえます。「嬉しい」、「楽しい」、「やったー!」などといった感情は、子どもの心身の成長に欠かせないものです。これらの興奮はすみやかに落ち着いていき、副交感神経が亢進して情緒の安定を導きます。子どもの犬に対する小さな成功体験は情緒の安定につながり、リラックスした時間をもたらします。犬と長い時間をかけた、ゆったりとした交流が習慣になると、日常生活において子どものストレスが減り、その状態を維持してくれます。
日常の“生活の質”を向上させるためには“コツ”があります。犬と子どもが一緒にいるときは、親は犬に対してもやさしく語りかけることが大切です。犬がいるだけで「嬉しい」という気持ちになるためには、犬がそばにいるときには子どもにとって“嫌なことが起きない”ということが大切です。専門用語で「条件性情動反応」という古典的条件付けの効果を期待することになります。犬がいるときは「みんなやさしい雰囲気になるので嬉しい」といった当たり前の状況が生まれることで、子どもはリラックスした状態になり、それが日常において情緒の安定につながっていきます。

次回は「犬によるセラピー効果」のうち、「集中力の向上」と「社会性の向上」について詳しくお話しします。

川添 敏弘(かわぞえ としひろ)
- 酪農学園大学獣医学群獣医保健看護学類 教授。
公認心理師、獣医師。
発達障がい者を対象とした“アニマルセラピー”について長年研究し、今は「動物の問題はヒトの問題」と考え、多頭飼育崩壊など動物愛護を中心とした社会問題に取り組んでいる。